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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第3章 弐の巻

 しかし、十一歳で元服した後、帝は新たに関白となった道遠を次第に遠ざけるようになった。帝にしてみれば、たとえ己れが藤原氏の血を引いているとはいえ、臣下である道遠に政を欲しいままにされ、ただの傀儡されるのが厭だったのだ。帝は露骨に道遠を疎んじ、二人の不仲が囁かれるようになったのはこの頃からであった。
「母上は随分とそなたをお気にいられたようだ」
 帝は口の端を歪め、冷笑した。

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