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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第3章 弐の巻

 顔も見たくない男から突然に想いを打ち明けられても、混乱するばかりだ。嬉しいどころか、厭わしさを感じてしまう。
 公子は混乱状態のまま、ひどく取り乱した気持ちで立ち上がった。
―帰らなければ、家に、帰らなければ。
 ただ父の待つ我が家に、住み慣れた屋敷に帰りたい一心であった。
 と、唐突に下腹部に鈍い痛みを感じた。
「あ―」
 突然の痛みに、公子は腹を押さえて蹲る。

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