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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第1章 《序章》

 少女は瞳に力をぐっと込め、対峙する相手を睨みつける。負けてなるものか、と思う。たとえ相手がいかほど身分の高い、高貴な人であろうと、人間には口にして良いことと悪いことがある。幼少とはいえ、一天万乗の君、至高の尊(たつと)い存在としてこの世に君臨する御身であれば―もっとも、少女にはこの礼儀を何たるかも知らぬ生意気な子どもを敬う気持ちなどさらさらなかったが―、もう少しは態度や物言いに気をつけて欲しいものだ。

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