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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第2章 壱の巻

 壱の巻

 ふわりと優しい風がそっと頬を撫でて通り過ぎてゆく。まるで幼い頃に亡くなった母のやわらかな手にあやされるような気がして、公子(きんし)はゆっくりと眼を開く。
 ゆるりと頭をめぐらせると、そこは、見慣れた自分の部屋であった。どうやら、文机で書見している最中に、うたた寝してしまったらしい。

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