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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第4章 参の巻

 たとえ藤原氏直系の娘とはいえ、一度嫁せば、安子は天皇家の人間だった。実家よりも良人や我が子を何より大切なものだと考えてきたのだ。先帝との間に生まれた道明親王―つまり帝は実父である先帝よりも伯父道遠に似ている。端整な顔立ちだけでなく、上辺と中身が全く違う、その怖るべき気性さえも。

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