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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第4章 参の巻

 帝が嗤った。
「母上、俺はあの男がもう少しは人らしい情のある男かと思うておりましたが、どうやら、俺の見方は甘かったらしい。何も姫を無理矢理こちらに引き止めておくという回りくどいやり方などせず、最初から言えば良かったのです。姫を私にくれ、と」
「―」
 最早言うべき言葉を持たない安子に、帝は口許を綻ばせた。

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