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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第5章 四の巻

「それとも、誰か他に好きな男でもいるのか?」
 改めて問われ、公子は小さく首を振る。
「そのような方はおりませぬ」
 消え入るような声で応える公子を、帝は烈しいまなざしで見据えた。
「それなら! 何故、俺をそこまでして拒む」
 公子は懸命な面持ちで帝を見上げた。
 涙に濡れた美しい女の瞳―、潤んだ瞳が燭台の明かりを受けて揺れている。

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