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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第5章 四の巻

「―あなたは、主上の想い人、梅壺女御さまでいらっしゃいますね?」
 確認するように問われ、公子はこれにもまた小さく頷く。この男に今更隠し立てしても何の意味もないと思ったからだ。
 と、はるか向こうで人声が聞こえた。
 男がそれに気付き、咄嗟に紙燭の火を吹き消した。
「どうやら他の追っ手もこちらに近付いているようですね」
 公子は唇を噛んで、うなだれた。

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