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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第5章 四の巻

 父の許に帰ろうかとも一瞬考えたのだけれど、当然ながら、帝は道遠の屋敷に公子が戻る可能性は高いと読んでいるだろう。そんな場所にのこのこと姿を見せれば、捕まえてくれと頼んでいるようなものだ。それに―、帝の言葉をそのまま信じたわけではないが、帝が公子の女御入内の話を持ちかけた時、父はあっさりと承知したという。しかも、かねてからその地位に就きたいと渇望していた太政大臣の地位と内覧の宣旨を手に入れるという条件と引き替えに。

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