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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第5章 四の巻

 今は悩んだり逡巡している暇はない。これから先のことはまた考えれば良いのだ。今は一刻も早く、ここを逃れることが肝要である。
 しかし、立ち上がった刹那、公子は小さな呻き声を上げ、蹲った。
「どうしました?」
 男が気遣わしげに公子の貌を覗き込む。
 公子は右脚を押さえ、小さな声で言った。
「脚が痛くて。立とうとしても立てないのです」

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