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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第2章 壱の巻

 そのときである。
 向こうから呼び声が風に乗って運ばれてきた。
「姫さま、姫さま」
 公子は振り向くと、およそ深窓の姫君には似つかわしくない大声で―しかも伸び上がり大きく手を振りながら応えた。
「相模、ここよ、私はここにいるわ」

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