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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第6章 伍の巻

 公之は公子の前でも帝の話はしない。仕事で帝の御前に出ることも多い公之ではあるが、公子と帝の複雑な拘わりを何よりもよく知る彼は、けして公子に帝の話について触れようとはしなかった。
 公之自身が帝を仕える主人として、どのように見ているのかは判らない。ただ、帝その人を尊敬しているというよりは、蔵人所の仕事をするのが自分の仕事だからと割り切って、極めて淡々と日々の務めをこなしているように見えた。

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