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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第6章 伍の巻

―そんな物凄い力を持つ鬼がこの都に潜んでいるのかと思うと、身の毛がよだつ。ああ、くわばら、くわばら。
 都人たちは寄ると触ると、そんな噂をして震え上がった。
 それは女御失踪を隠蔽するために故意に流された噂ではあったものの、人々はそれを頭から信じ、恐怖に打ち震えた。そのため、人心が大いに乱れ、宮廷では高僧を集め、悪鬼調伏、国家平安の祈祷を大々的に行わなければならないという事態にまでなった。

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