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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第6章 伍の巻

―そなたは実の父に売られたのだ。
 あの夜、帝はそう言ったが、まさに、そのとおりであったのだろう。父は長年、太政大臣の地位と万機を決する権限を持つ内覧の立場を欲していた。内覧の職務にある者は特に宣旨を受け、天皇に奏上すべき公文書を内見し、政務を代行する権限を持つ。
 しかし、天皇親政を主張する帝とは反りが合わず、帝は玩具を欲しがる子どもをじらすように、道遠にそれらをくれてやらなかった。

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