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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第6章 伍の巻

 次の瞬間、公子の身体は公之の逞しい腕に包み込まれていた。
 だが、公之に触れられても、公子は少しも怖くない。帝に触られたときのような嫌悪は微塵も感じない。むしろ、―はしたないことなのかもしれないが、こうしていると、どこにいるより守られていると、安堵することができた。
「何だか、怖いくらいに幸せです」
 公子の声が幾分くぐもっている。

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