テキストサイズ

無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第6章 伍の巻

 この場で何をどう言えば良いというのだろう。自分は公之を確かに愛している。だが、肝心の相手の気持ちも判らないし、第一、公子は公之の親切でこの別邸に厄介になっているだけの人間にすぎないのだから。
「もし、私がここにいることで公之さまにご迷惑をかけているというのであれば、私は明日の朝にでもここを出てゆきます」
 公之にはもう十分世話になった。これまで長い間、公之の優しさに甘えすぎたのかもしれない。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ