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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第6章 伍の巻

 苛立ちのこもった声。
 これまで一度もこんなことはなかったのに、この日は話せば話すほど、会話がかみ合わない。もつれた糸が更にもつれて解(ほど)けなくなってしまうようだ。
「それに、私が訊きたいのは、姫が私の気持ちをどのように想像しているかではない。姫が私をどのように思っているか、それだけだ」
「―申し訳ありません、私、どのようにお応えしたら良いか判りません」
 公子は溢れそうになった涙をこらえ、やっとの想いで言った。

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