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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第6章 伍の巻

 月光に透かしてみると、毛むくじゃらな虫が銀色に光って見える。
「お前は、本当はこんなに綺麗なのにね」
 公子はそう言って笑うと、壊れ物を扱うような手つきでそっと虫を草むらに戻してやった。
 そう、何があっても生きなければ。
 公子は思い直すと、川とは反対の方向へとゆっくりと歩き出した。

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