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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第6章 伍の巻

 これから自分がどのような目に遭わされるのかと思うと、恐怖に気が狂いそうになった。
 盗賊たちの目的がはっきりと判らないまでも、自分にとっては極まりない危険に晒されている―即ち最悪の状況であることは自覚している。
 いっそのこと、正気を手放してしまった方がよほど楽なのではないか。
 公子の眼裏に一人の男の面影が浮かんだ。
 男の深いまなざしが包み込むように見つめてくる。

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