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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第6章 伍の巻

 今になってみると、公之自身も自分が何故、あのような愚かなふるまいに及んだのかは判らない。多分、伯父公明に呼びつけられ、早く身を固めろとせっつかれたところで、彼自身も焦っていたのだろう。
 それが、彼をしてあのような無体なふるまいに及ばせようとした。だが、それは言い訳にはならない。
 可哀想に、公子は、どれだけ辛かっただろうか。八ヵ月前、公子と初めて禁裏の庭で出逢ったあの夜の出来事がまざまざと思い出される。

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