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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第6章 伍の巻

 公之は静謐な瞳で公子を見つめた後、持っていた刀を無造作に放り投げた。
「そう、それで良い」
 鬼丸が満足げに頷く。
 その時、ひと刹那の間が生じた。
 その鬼丸が見せた、たった一瞬の隙を公之は見逃さなかった。
 公之がピィーと指笛を鳴らすと、いずこからともなく白馬が現れる。まるで神の使いを思わせるかのような純白の馬は、ひと声鳴くと、公之の方に向かって全速力で疾走してきた。

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