テキストサイズ

無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第2章 壱の巻

 この時代、良家の子女はむやみに人眼に触れるものではないとされている。殊に左大臣家の姫ともなれば、尚更で、深窓の姫君はたとえ兄弟とはいえ、話をするのさえ御簾越しでというのが当時の通例であった。
 ゆえに、寛容な左大臣道遠だとはいえ、自分が侍女の役目を全うできなかったことは事実、相模はそれゆえ、まず道遠に謝ったのである。
 が、果たしてというか、予想どおりにと言うべきか、道遠は屈託ない笑みを浮かべた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ