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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第2章 壱の巻

「私などに勿体なきお言葉にございます」
 公子が首を振ると、道遠は沈鬱な表情で首を振った。
「いや、何もそのように堅苦しう考えることはない。大宮さまは、そなたを血の繋がりし姪と思えばこそ、逢いたいと仰せなのだ。そなたも幼い砌は大宮さまに可愛がって頂いた。昔話に打ち興じるのも今の大宮さまには悪いことではなかろう」
「―そんなにお具合がよろしくないのですか」
 公子は胸が塞がれる想いで問うた。

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