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リービングでマッチを片手で擦るベカラズ

第2章 トレーニング

自宅にて啓二は購入した箱マッチを広げ、とりあえず片手のみでマッチを擦ってみた。

が、あまりにももたついて思うように擦れない自分に荷立つ啓二…。

「かぁ~! ゆ、指がつってきたぁ~!! 難しぃー!!!」

灰皿の中身は何本もの火が点かぬまま折れたマッチ棒で山脈を作りつつある。

気を取り直し、DVDの例のシーンをスローモーション再生しながらイメージトレーニングする啓二。

「こうか? 違う、こうだ! いや、こうかな??」

シュッ

シュッッ

ズシュッ

シュボッ!!

「あっ、つ、点いたぁ~!!! うっひょ~!!!!!」

初の片手マッチ点火に成功し狂喜乱舞する啓二。

「よおし! こいつを更にエレガントなアクションに昇華させて週末の深夜にバーに出向き、さりげなく片手マッチ点火で一服してる所をだね、失恋の傷を独り酒に浸りながら癒している極上美女に目撃されてだな…そのあとは、、、う、うひょ…うっひ…むっひょ~~~!!!!!」

そんななか、点火したマッチを消さずに狂喜乱舞に更けっていた啓二の指先にマッチの炎が接触した。

「あづっっっ!!!」

慌てて火の点いたマッチを灰皿に投げ入れる啓二。

点火前の折れたマッチ棒で山脈を成していた灰皿に燃えているマッチがダイブした瞬間、灰皿は天井目掛けて猛烈な火柱を上げた。

「ぎょえええーーーーーっ!!!」

室内は瞬く間に炎に包まれ、火の粉が啓二の髪に乗移り、頭皮が燃え盛る。

「あづづづづづづづづづっっっ!!!」

ゴーストライダー変身時のように炎に包まれた啓二は死の淵で絶叫した。

『リービングでマッチを片手で擦るベカラズっっっ!!!!!』




完。

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