禁断兄妹
第61章 消せない傷
「黒塗りって‥‥黒い色ってことですか?」
「そうですね。簡単に言うと値段の高い黒の乗用車です」
灰谷さんはその特徴や
車の名前をあげてくれたけど
あまりよく
わからなかった。
意識していなかったせいもあるけれど
通学の時もそれ以外の時でも
そういった車を見た覚えはない
私がそう言うと
本当にここ最近のことらしくて
タイに行っていた灰谷さんも
初耳だったと言う。
「見たというコンシェルジュは二人だけで、しかも合わせて三回だけらしくて。
管理会社には報告してるそうですが、マンションの住人に関係するとは言いきれなくて、この情報はまだ公にされていないそうです」
確かに公にするには
頼りない情報かも
「未確認情報で住民をいたずらに不安にさせてはいけませんからね。
しかし車が車だけに、私はどうも嫌な感じがするんです」
「黒い色の車はよくあると思いますけど‥‥」
すると灰谷さんは
声を落として
「黒塗りの高級車はですね、乗ってるお金持ちがそっち系の場合があるんです」
「そっち系?」
「ヤクザです」
「‥‥」
「住人の中に、ヤクザとの何らかのトラブルを抱えてる人がいないとも限らない。
万が一巻き込まれたら、大変です」