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禁断兄妹

第61章 消せない傷



ドラマで
巻き込まれて拳銃で撃たれるのとか
見たことがあるけど

灰谷さんは
そういうのを
心配してるのかな


なんだか
実感がないんだけどな



「教えてくださってありがとうございます。

 ‥‥気を付けて帰りますね」



「‥‥」



灰谷さんは表情を曇らせた。



「いつも一人で行き帰りしてるんですよ、全然平気です」



「しかし‥‥‥」



まだ心配そうな灰谷さんに

ちゃんと気をつけますから、と
片手をグーに握って
笑いかけると

やっと少し
笑ってくれて



「じゃあ‥‥もしマンションの周辺で不審な車を見かけたら、無理をせず駅に引き返してくださいね。
 そして安全な場所からフロントに電話して、その車のことを伝えてください。
 私にでも、勿論いいですから」



灰谷さんは
携帯の番号を教えてくれた。


そしてエレベーターまで
二人並んで歩きながら



「灰谷さん」



「はい」



「‥‥大人って、何歳からなんでしょうか」



私は
さっきからずっと
胸の奥で考えていたことを

思いきって

投げかけた。



───‥‥もっと大人になったらって、いつ‥‥?───



柊に聞いたあの夜


柊は

答えなかった


私も

わからなかった


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