禁断兄妹
第62章 夢のチカラ・夢のカケラ
お父さんは
ゆっくりながらも楽しそうな声で
人気のある選手がたくさん出場する大会で
テレビ中継もあるし注目が集まっていると
教えてくれた。
「このビッグチャンスをものにしようと弘至君も燃えてるよ。今日はそんな話をしたんだ」
「へえ‥‥その試合の話は聞いてなかった。
頑張って欲しいな。応援しなきゃっ」
「ふふ、お前の話を聞くつもりがつい喋りすぎたな」
お父さんは苦笑い
だけど
この話題のおかげで
お父さんはさっきより元気になった気がする。
「お父さん、灰谷さん好きだよね」
「ああ。なんだかね、柊と同じ歳のせいもあって応援したくなるんだ」
柊
いきなり出てきた
大好きな人の名前にドキン
でもそれ以上に
びっくりしたのは
「同じ歳?!灰谷さんって、そんなに若いの?!」
「落ち着いてるよなあ。下手すりゃ三十近くに見えるね」
お父さんは
くすくすと笑ってから
彼はね、苦労してるんだよ
暖かな声で
そう言った。
「若い人が夢に向かって頑張る姿はいいものだよ。お父さんは好きだな。
柊も、モデルだけで食っていこうとしてる。トップモデルがあいつの夢なら、応援したいね」
「うん」
柊と
灰谷さん
同じ歳なら
お友達になれないかな
なんて
ドキドキしながら考える。
無理かなあ
「萌の将来の夢はなんだい?お菓子屋さんだったかい」
「ううん。今はね、フルート奏者」
まだ落ち着かない心臓をなだめながら
でも
迷いなく答えた。
「おや、フルート奏者?初めて聞いたぞ」
お父さんは
これは寝ていられないな、と
身体を起こした。