禁断兄妹
第62章 夢のチカラ・夢のカケラ
「部活で始めたフルートが本当に楽しくて、いくら練習しても面白くて飽きないの。
これがお仕事になればいいなあって」
あの日
柊と和虎さんの前で話したことで
フルート奏者になる夢は
よりはっきりとした形になっていた。
「そうかそうか、フルートか。練習は部活だけでやってるのか?
もっと真剣にやりたいなら個人レッスンにも通ったらどうだ?」
私は
できればそういうレッスンに通ってみたいこと
そして音楽の大学に進みたいことを話した。
聞いている間中
お父さんはずっと笑顔で
何度も頷いてくれて
さっきまで眠そうだった目は
いつの間にか
キラキラしている。
「お母さんとよく相談しながら、萌のやりたいようにやってみなさい。
音楽もね、それだけで食べていけるのは一握りの人間だけだ。でも好きなことなら、チャレンジしてみなさい」
「はいっ」
「トップモデルにフルート奏者か。俺は凡人なのに、お前達は本当にすごいよ」
萌はあれだな、美しすぎるフルート奏者ってやつだな、と
お父さんは和虎さんと同じことを言いながら
再び横になった。
細めた目を閉じて息をつくその顔は
本当に嬉しそうで
それを見た私は
胸が熱くなるのと同時に
ふと
ひらめきのようなものを
感じた。
実現するかもわからない
夢の話をしただけなのに
お父さんはとても喜んでくれて
なんだか
元気が出たみたい
もし
話だけじゃなくて
少しずつでも夢に近づく姿を見せることができたら
お父さんはもっと元気が出て
病気が
良くなるかもしれない
「‥‥お父さん」
「うん?」
「私、お母さんとだけ相談するんじゃなくて、お父さんとも相談しながら頑張りたい」
お父さんは
黙ったまま目を開いて
私を見た。
「いつかフルート奏者としてステージに立つ姿、お父さんに見せたい」