禁断兄妹
第62章 夢のチカラ・夢のカケラ
一握りの人間に私がなれるのか
わからないけど
───努力を根気よく積み重ねていきなさい。
それがいつの間にか階段になって、必ず手が届くようになるから───
柊の言葉が
勇気をくれる
「そうだな‥‥
この目でお前の成長していく姿を見れたら、どんなに楽しいだろうね」
「そうでしょう?きっと楽しいよ。私頑張るから、だから───」
「萌。俺は期待を持たせるようなことは言うのは好きじゃないから、あえて言うよ。
お父さんのこれからのことは、覚悟しておきなさい。
まだやるべきことが残ってるから、それだけは方をつけてから逝くつもりだけど、この身体にガタが来てることは確かなんだ」
穏やかな口調のまま
静かに
線が引かれた。
「でもね、もしこの姿形がなくなっても、ちゃんと見てるから。お父さんは萌のこと、いつだって応援してるから。
それは今もずっと先も、そばにいても遠く離れても、変わらないよ」
私を包み込む
暖かな風
それが天へと舞い上がり
雲間に消えていくような
感覚
泣きたくなって
何も言えなくなって
しまいそうで
「ちゃんと元気になって、その目で見て欲しいのっ。覚悟なんてしないもーん」
べーっと舌を出した。
「ふふ、そうだな‥‥覚悟なんて言われてできるものじゃないか。
‥‥俺もそうだったもんなあ」
お父さんは独り言のようにそう言って
ふうっと息を吐いた。
「萌は美弥子に似てるな‥‥のんびりしててか弱そうなのに、時に物凄い意思の強さを感じる。
お前なら、きっと夢を叶えるんだろうなって、思うよ」
「叶うと思う?」
「勿論」
力強い声
「私の夢には、お父さんに見せることも含まれてるの。空の上からとかじゃなくて、ちゃんと座席からだよ。
それも叶うってことだよね」
「俺も込みなのか」
「うん、コミコミだよ」
「じゃあ、叶うな」
お父さんはふふっと笑った。
「叶うよ。叶えてみせるもん」
私も笑った。