禁断兄妹
第62章 夢のチカラ・夢のカケラ
「スタンバイお願いしまーす!」
イベントも終盤
このブランドがラストだ。
幕の向こうで
トリのアーティストを待つフロア
今はDJのプレイに盛り上がり
熱気は最高潮
バックステージは一層慌ただしく
殺気立っているほどだ。
出番までもうすぐという
緊張感の中
「一ノ瀬さん!」
俺のもとに
一人の若いスタッフが
慌てた様子で駆け寄って来た。
「妹さんが急用で一ノ瀬さんに会いたいって、入口んとこに来てるんです!
名前、萌さんですよね?」
「‥‥え?」
萌?
まさか
「すごく泣いててどうしても会いたいって‥‥ちょっと来てもらえませんか」
泣いてる?
「本当ですか?今?」
「生徒手帳見せてもらったんで、本人に間違いないです。
中学生だから入店させたらやばいかと思って、今連れてくるからって入口に待たせてます」
スタッフは
もどかしそうな顔でそう言うと
俺に耳打ちする。
「病院から来たみたいです。お父さん、危篤らしいです」