禁断兄妹
第62章 夢のチカラ・夢のカケラ
父さんが
危篤‥‥?
すうっと
血の気が引く
感覚
俺を呼びに来るほどに
切迫してるのか
「今はダメだ!ショーの後にしてもらえ!」
進行役のスタッフが怒り気味に近づいてきて
若いスタッフは首をすくめる。
進行役の反応は
当然だ
DJタイムは終わりに近づき
もうすぐライブのSEが流れ始める。
しかしショーが始まってしまえば
最低でも二十分
ここを離れることはできない
いやアンコールもあるから
もっと時間がかかる
「すみません、すぐ戻りますから、一瞬行ってきていいですか」
今
萌と一緒に病院に行くことはできない
せめて顔を見せて
仕事が終わったらすぐ行くからと
安心させてやりたい
「冗談じゃない、一ノ瀬君がファーストルックじゃないか!もうSE流れるんだよ?!」
「父が危篤らしいんです。一瞬だけ行かせてください」
「えっ、危篤?!」
「本当にすみません、出番までに必ず戻ります!」
言うが早いか
俺は全速力で
駆け出した。
この状況は
似てる
遠い日の
記憶
そう
母さんが死ぬ時の
俺と父さんに
似てる