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禁断兄妹

第64章 聖戦②



私の
ほぼ真横

並んでいる車と車の間で

闇に溶け
地面と同化するように伏せていた
黒く長いコート

それが
ゆっくりと
音もなく

うずくまる人の形に
変わっていく。



「‥‥!!!」



目にした私は

石に
変えられて

悲鳴をあげることも
目を覆うことも

瞬きさえ

できない



「はあ、はあっ、やっと見つけた‥‥って、え?」



「和虎、こいつが萌をつけてたヤバい奴だ。背中に隠してるのはきっと萌だ」



「ええっ?!」



「もう逃げられないぞ灰谷。立てよ」



「‥‥っ」



誰も
気づいている様子がない


私から
車一台分ほどの距離で
目覚めた悪魔

こんなにも近くにいるのに


誰か気づいて

誰か



「‥‥こ、これには事情があるんです一ノ瀬さんっ、本当なんです!!」



「は?!何を───」



「この通りです、お願いですから黙って私達を行かせてくれま───」



「私達?!私達って何だ?!萌のことか?!やっぱり萌なんだな?!」



「お願いです、どうか何も聞かずに行かせてください、私を信じてもらえませんかっ」



「信じる?!お前を?!
 ふざけるな!!そこをどいてから言え!!」



悪魔が
静かに顔をあげた。


鎌首をもたげた



その目がギラリと光って
私を射抜いた瞬間

口内を這い回った舌と

胸を掴み割れ目をまさぐった
冷たい指の感触が

鮮明に

蘇った。

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