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禁断兄妹

第65章 聖戦③



前を歩く看護師の
白い服

迷路へ誘われる悪夢を
見ているよう


萌に
なんて言えばいい

どう切り出す

父さんが亡くなったんだ
なんて

無理だ

言えない


「後で先生から詳しいお話をさせて頂きますけど‥‥妹さん、傷は大きいんですが骨折や頭の中の出血はありませんでしたから」


看護師は
歩きながら俺を振り返り
傷の状態を説明する。


骨折や頭の中の出血はない


その言葉に
隣を歩く和虎と顔を見合わせ
安堵の息を漏らした。

絶望的な今の状況の中
僅かに差し込む光のように
思えた。


「ただ脳震盪を起こしていますので注意が必要です。
 かなりぼんやりとしていますし、受け答えもたどたどしいです」


「そうですか‥‥」


今は伝えないほうがいいのか

いや
俺の顔を見れば
萌はきっと父さんのことを聞く


「このような状態は時間の経過とともに改善される場合がほとんどなので、あまり刺激せず、今日のところは面会も顔を見る程度で切り上げて、まずはゆっくりと眠らせてあげてください。
 明日落ち着いたところで改めてカウンセリングをしますから」


看護師の歩みが
一つの病室の前で
緩やかに止まった。

入りましょうか、というように
俺を見上げる。


「刺激せず、というのは‥‥」


「はい」


「精神的に負担になるような会話も、避けるべきということでしょうか‥‥」


「そうですね。
 興奮状態になって寝つけないと体力も回復できません。明日以降のほうが」


明日以降は
もう
通夜だ

どうする


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