禁断兄妹
第66章 罪と罰
項垂れた美弥子は
深いため息をついた。
「巽さんが亡くなったと知ったら、萌はすごく傷つくわ‥‥
先生や看護師さん達が心配していたの。容態が悪くなったのは自分のせいだって、泣いて飛び出していったらしいから。
私に電話してきた時も、自分が喋りすぎたせいだ、みたいなことを言っていたし‥‥」
「俺も萌からそう聞いたよ。どうしてそんな風に思い込んでしまったんだ」
「うん‥‥私も聞いた話でしかないのだけれど‥‥」
美弥子は俯いたまま
ぽつりぽつりと話し始める。
学校帰りに制服姿でやって来た萌は
かなり長い時間
父さんとここで過ごしていて
十八時頃
萌との会話の途中で
父さんは体調不良を訴え
意識を失ってしまったらしい。
何か兆候はあったかと医師に聞かれた萌は
自分が長居しすぎて疲れさせたせいだと
泣き崩れ
その後家族を呼ぶように言われたが
俺がつかまらなかったことで
病院を飛び出していったという。
───私が、いっぱい喋りかけたの、お父さん疲れてたのに、全然気がつかないで、ずっと‥‥!───
───このままお父さんが死んじゃったらどうしよう、どうしたらいいの?!───
あの時の悲痛な表情と
大粒の涙が
ありありと思い出されて
息が詰まりそうになる。
どれほど辛かったか
どれほど怖かったか
萌の時間が遡ってしまったのは
強い自責の念が原因なのかも
知れない。
「俺がちゃんと言って聞かせる。あんな思い込みは、辛すぎる」
「うん‥‥」
美弥子は頷いて
「私ね、思うの‥‥うまく伝わるかな‥‥」
そう言うと
静かに
言葉を続けた。