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禁断兄妹

第66章 罪と罰



「あのね‥‥

最近の巽さんの体力は
目に見えて落ちていたし

体調は
不安定で

先生から
いつどうなってもおかしくないって
言われてた。

だから
萌と長く一緒にいたことが
巽さんの体調に影響した可能性は
ゼロではないかも知れない。


でもね
巽さんは自分の身体のことを
誰よりもよくわかっていたの

もっと早く萌を帰すことも
出来たはず。


そうしなかったのは
巽さん自身が
萌といることを選んだからだって
思うの。


考えたら
巽さんと萌が二人だけでそんなに長くいたことって
今までなかった気がするの。

私も柊君もいない
父と娘の水入らずの時間よ。

きっと萌には新鮮で
嬉しくて
話が尽きなかったんじゃないかな。

そして
楽しかったのは
きっと巽さんも同じだった。

巽さんは
萌といたかったのよ。

きっと
とても幸せな時間だったはずよ。


残された時間の使い方は
巽さんが決めること。

萌と過ごすことに
時間を使おうと決めたのは
巽さん自身なんだわ。

だから
こうなってしまったことは
誰のせいでもないし

ましてや萌のせいなんかじゃない。

どちらかと言えば
巽さんのわがままに
萌が巻き込まれてしまったくらいじゃないかしら。

ふふっ。


だからね

萌は自分を責める必要なんて
これっぽっちもないわ。

これで良かったの。

良かったのよ。

私は
そう思うわ‥‥」


微笑みを浮かべる
美弥子の目尻から
ひとすじの涙が
零れた。

きゅっと上がっていた口角が
震えて

美弥子は堪えきれないように
泣き出した。


背を丸め
子供のように泣きじゃくる
その細い肩を抱いて

俺は
大きな窓の外

降りしきる雪を
目に映していた。

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