禁断兄妹
第66章 罪と罰
ドアが閉まり
リビングは再び静寂に包まれ
残された俺の身体は熱を帯び
息が上がっていた。
「くそ‥‥っ」
美弥子の頑固さは
今に始まった話じゃない
少なくとも美弥子自身の方がつくまで
聞くことはできないだろう。
喉の乾きを覚えた俺は
冷蔵庫から缶ビールを取り出すと
その場で開け
立ったまま口をつけた。
握っている缶の腹が
べこりと音を立てる。
生きているうちに
方をつけておきたい
そんなことを
俺が見舞いに行った直後に言い出したのは
何故だ
その手助けを
美弥子にだけ頼んだのは
何故だ
俺には秘密か
言えないことか
「はあ‥‥っ」
さっきまで座っていたダイニングの椅子に
身体を投げ出すように
腰をおろした。
椅子の背が軋み
フローリングと擦れた脚からあがる
耳障りな音。
俺に関することなんじゃないのか
俺と萌に関することなんじゃ
ないのか
そうだろう
父さん
───もし俺に‥‥話したいことが、あるなら‥‥もしあるなら‥‥今、言えないか‥‥?───
そう問い掛けられた時
俺は直感的に
萌との関係を疑われていると感じた。
あの感覚は
きっと
正しかった。
───話したいことなんて別にない‥‥ただあなたと酒を飲んでみたい、それだけだ───
萌を一人の女性として愛している
なんて
言える訳がなかった。
血の繋がっている妹
しかも
まだ十三歳
俺が禁忌を冒したことを知れば
父さんは
俺達を引き離す
父さんじゃなくたって
誰だってそうする
許されるはずがない
だから俺は
父さんに心を開くことよりも
萌との未来を守ることを
選んだ。
───それとも逆に‥‥俺に話したいことが、あるの───
───俺も別にないよ。お前にないなら、それでいいんだ‥‥───
あっけらかんとそう言って
穏やかに微笑んでいた父さん
でも
本当は
俺と萌の関係を疑い
不信感を持ち
例えば
美弥子に北海道行きを命じたのは
引っ越し先を探しに行かせる為だったのかも
それとなく俺と萌を引き離し
異常な関係を終わらせる
それが
父さんが最期に方をつけたかったこと
なんじゃないか