禁断兄妹
第66章 罪と罰
「わかんない‥‥」
辺りを見回し
泣きそうな顔をする萌
隣に立つ看護師が
その背中を優しくさする。
「萌さん、目が覚めるとすぐお兄さんの姿を探されたんです。
ずっとロビーにいたって言ってたからまだいるかもって、探しに行くって聞かなくて‥‥」
俺を探してたのに
どうして俺から
距離をとる
「え‥‥灰谷さん‥‥?」
小さな驚きの声と共に
萌の瞳が瞬く。
視線の先を辿ると
俺の後方で立ち上がっていた灰谷が
萌を見つめていた。
困惑しながらも
萌は会釈をしたが
目の前の和虎には
何も言わない。
和虎と出会う前まで記憶が遡っているから
誰だかわからないと
いうことか
「萌‥‥和虎にもご挨拶して」
思い出せ
萌
「和虎さん‥‥って、お兄ちゃんのお友達の‥‥?」
「ああ。とても心配してくれたんだよ」
ヒカリで三人で過ごした夜から
まだ一週間も経っていない
お前和虎の話に
あんなに笑ってたじゃないか
萌は和虎をちらちらと見ているが
心細そうに
確証を求めるような視線を俺に送る。
思い出せよ
頼む
から
「‥‥おはよ、萌」
いたたまれなくなったのか
和虎が声をかけた。
「あっ、は、はい。おはようございます‥‥」
慌ててお辞儀をする萌
まるで
初対面
その様子は
演技とは思えない。
いや
演技をする必要が
どこにある
「‥‥っ」
押し寄せる失望
両手を床についてしまいそうになるのを
歯を食いしばって
堪えた。
「萌‥‥一旦部屋に戻ろう。少し話があるんだ」
「お兄ちゃん、私、どうして頭を怪我しちゃってるの‥‥お兄ちゃんは何か知ってるの?」
「ああ。さあ、行こう」
力を振り絞って
立ち上がり
萌の横に並ぼうとした俺から
萌は
看護師を盾にするように
さりげなく身体を移動させた。
それに気づいた看護師が
萌を安心させるように背中を抱いてやる。
「萌、俺のこと避けてる‥‥?」