禁断兄妹
第66章 罪と罰
プライベートな話になるから
萌の身体に異常が見られた時以外は口出し無用と伝えた上で
看護師にも部屋にいてもらうことにした。
ベッドに腰掛けた萌は不安げな表情で
パジャマの上着の裾を
両手で握り締めている。
最近目を見張るほど大人っぽくなっていた萌だったが
記憶障害を裏付けるように
今は仕草も雰囲気も年相応に感じられた。
「気分が悪くなったりしたらちゃんと言うんだよ。何か思い出した時も、教えておくれ」
「うん‥‥」
どれほどショックを受けるか想像もつかないが
必要最低限のことは
話すしかない
話を聞くうちに
思い出してくる可能性は充分ある
俺は勇気を奮い立たせた。
「萌はね、昨日の夜、頭をぶつけて怪我をしてしまったんだ。
そのせいで萌の中の時間が、逆戻りしてる状態なんだよ」
「逆戻り‥‥?」
「ああ。
萌は今が七月だと思ってるかもしれないけど、今日はね、十二月の十七日なんだ」
瞬きを繰り返す萌
俺は近づき過ぎないように注意しながら
携帯の日付を見せ
閉めてあったカーテンを開けた。
あっ、と小さく叫び
凍りつく萌
窓の外の冬枯れの景色を
凝視する。
「萌が怪我をした時、俺と和虎もその場にいたんだけど、灰谷もそこにいたんだ。
この看護師さんは灰谷の知り合いでね。萌をこの病院に運んでくれたんだよ」
目を見開いたまま
微動だにしない横顔
俺の声が聞こえているのかわからなかったが
ここで立ち止まる訳には
いかなかった。