禁断兄妹
第66章 罪と罰
この五ヶ月の間に
父さんの身体に癌が見つかり
最近は特に具合が思わしくなかったこと
萌が見舞に訪れている最中に
危篤状態になってしまったこと
それを俺に知らせに来てくれた帰りに
萌は転んで頭を打ったことを
慎重に言葉を選びながら
話し続けた。
聞いているうちに記憶が戻るかもしれないと
期待を抱き
反応をうかがっていたが
萌は茫然と凍りついたままで
何かを思い出した様子はない。
「何か思い出せるか‥‥?」
最後通告の
確認
しかし萌は
ガラスのような瞳で窓の外を見たまま
首を振った。
「お父さんとお母さんは旅行に行ったの‥‥私とお兄ちゃんはお留守番で‥‥」
「そうか‥‥」
望みは
断たれた
もう
俺の口から
言うしかない
「萌、落ち着いて聞くんだよ。父さんは───」
「やめて!!」
突然
萌が鋭く叫んだ。