禁断兄妹
第66章 罪と罰
「怖い‥‥聞きたくない‥‥っ」
全身をぶるぶると震わせる萌
呼吸が荒くなり
蒼白の頬がひきつっている。
「萌、とても大事なことなんだ。聞いて欲しい」
「やめて!!お父さんとお母さんは旅行に行ってるんだもん!!明日には帰って来るんだもん!!」
「だからそれは五ヶ月前のことだ。父さんもその頃は、元気だった」
「嘘!もうやめて!!」
萌は聞き分けのない子供のように
大声をあげた。
「どうして?!どうして頭を怪我しただけでこんなことになるの?!全然わかんないよっ!!」
感情を爆発させた萌に圧倒されそうになって
俺は思わず一歩踏み出した。
「落ち着け萌、怖いのはわかる、でも俺がついているから、俺と一緒に乗り越えて───」
「来ないで!!!」
金切り声をあげた萌は
側にあった枕を掴み
俺に強く投げつけた。
「お母さんは?!お母さんを呼んで!!」
足元に落ちた枕
蹴り飛ばしたい衝動をねじ伏せた身体が
震えた。
「母さんは家で待ってる‥‥でも家に帰る前に、父さんのことをお前に話さなくちゃならないんだ‥‥っ!!」
「嫌!!聞きたくない!!」
「萌、俺の言うことが聞けないのか?!」
互いを凌駕しようと
大きさを増していく声
「もう帰る!!家に帰るぅッ!!」
「萌!!」
積み重なり
膨れあがるそれを
俺は
「聞け萌!
父さんはな‥‥父さんは亡くなったんだ、今日の夜が、通夜なんだ‥‥っ」
力ずくで
なぎ払った。