禁断兄妹
第66章 罪と罰
俺はその足で受付に向かい
父親の死という緊急事態を説明し
萌の退院を求めた。
記憶障害や嘔吐があったものの
傷の手当は済んでいることもあり
事情が事情だからと
安静を条件に萌は退院できることになった。
ロビーに戻ると和虎と灰谷がまだいて
離れた場所に腰を下ろした俺の様子を窺っている。
何を見てやがる
帰れ
そんな悪態が今にも口をつきそうで
目を合わさないよう下を向き
両手で顔を覆った。
深く吐いた息が
まだ熱い。
俺が馬鹿だった
感情的になってしまった
───最悪の場合の覚悟は、できてるつもりだ───
───もしそうなったら‥‥その時は萌と痛みを分かち合うさ───
和虎にそう言った時の俺は
夢でも見ていたのか
覚悟?
痛みを分かち合う?
笑ってしまう
父さんの顔も見れず
萌には忘れ去られ
拒絶され
「‥‥ハッ‥‥笑えるな‥‥」
萌
まだ泣いているだろうか
泣き叫ぶ声が聞こえる気がして
耳を塞ぎたくなる。
───どうして頭を怪我しただけでこんなことになるの?!全然わかんないよっ!!───
俺だって
お前の身に何が起こったのか
喉から手が出るほど
知りたいよ
何故あんなところに
灰谷と一緒にいたのか
お前の口から聞きたいんだよ
突然現れた男が
投げた物
お前は俺をかばおうとしたんじゃないのか
謎は今も謎のまま
いつになれば
全てが明らかになる