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もしまだ柊君が無事なら
安全な場所へ逃げてと伝えたい

そして修斗ともう一度話をして
なんとか復讐を思いとどまらせたい

修斗が聞き入れてくれないなら
おじいちゃんからも修斗に話をしてもらいたい


「───修斗が傷害で逮捕されでもしたら、組もおじいちゃんも困るはずよ。
　誰も得をしない、皆が不幸になるだけなのよ」


必死に訴えたけど
黙って聞いているツトムさんの冷静な表情は
何も変わらなかった。


「カシラはヘタ打ちしませんから、逮捕はありえません。
　まあ、カタギ相手には手加減するでしょうし」


「手加減するような雰囲気じゃなかったわ。あの鬼みたいな顔、ツトムさんだって見たでしょう？！」


「鬼、ですか‥‥

　でも、鬼にしたのは、誰なんですかね？」


ツトムさんは
穏やかな表情のまま
じっと私を見た。


「カシラを鬼に変えたのは、誰なんでしょう？」


重ねて問いかけられて
言葉に
詰まる。


私


そうよ
私のせい

修斗を裏切り続け
取り返しがつかないほど怒らせたのは
私

全部私が悪い

わかってる
けど



「また泣くんですね」


「‥‥泣いてない‥‥っ」


ツトムさんは
ふふっと笑った。


「わかってるわ。私が悪いの。どんな罰だって受けるわ。

　でも、私が受けるべき罰を、どうして柊君が受けなきゃいけないの？
　それが耐えられないのよ。それだけよ‥‥っ」


堪えようとしても
涙が滲む。


情けない

悔しい


「嬢。カシラもね、嬢と同じことを思ってらっしゃると思いますよ」


同じ
こと


「どういう意味‥‥？」


「カシラは今回の件に大変責任を感じてらっしゃいます。
　週刊誌にすっぱ抜かれ嬢がここに戻らざるを得なくなったのは、結局カシラが甘かったせいですから」


「違うわ、修斗のせいじゃない」


「右も左もわからん赤ん坊が怪我をしたなら、それは子守りの責任でしょう」


「わ、私は赤ちゃんじゃ───」


似たようなもんです、と
切り捨てられて


「目付役として手を打つべき局面が何度もあったんです。もっと早く一ノ瀬柊を潰すこともできた。
　でもカシラは嬢のことになると甘い。二の足を踏み続けたんです。
　最後に一ノ瀬柊を嬢に会わせたこともそうです。会わせずにとっとと嬢を運べば良かったのに‥‥甘いんですよ」