禁断兄妹
第67章 罪と罰②
「迷惑をかけて、本当にごめんなさい‥‥っ」
急いで膝を折り
床に手をついて
頭を下げた。
「助けてくれて、ありがとう。心から反省しています、ごめんなさい‥‥っ」
「ふうん‥‥」
それきりおじいちゃんは
黙ってしまった。
私に対しては昔から優しいけれど
極道としての恐ろしい顔を
持っている人
じっと見下ろされているのを肌で感じて
威圧感に
押し潰されそうになる。
「なぁ由奈。
家を出て、夢追っかけて、カタギの男追っかけて‥‥どうだ、もう気が済んだか?」
私は息を殺して
床を見つめた。
「お前は霧島家の娘なんだ。カタギの世界じゃ、まず生きられねぇ。
わしはずっとそう言い続けてきたよな。お前は聞く耳を持たんかったが、これでやっと腹に落ちたんじゃねぇのか?」
「はい‥‥」
更に深く
頭を下げた。
そうするしか
なかった。
「霧島家の娘だという事実は、お前がどう足掻こうが動かせねぇんだ。
そろそろ腹くくって、わしを安心させてくれんかな」
わしを安心させてくれんか
今まで何度も
言われてきた言葉
結婚という意味を含んでいるその言葉を
今また聞かされて
私の胸の中で
一つの決意が
生まれた。
「ところでどうだ、まだ死にてぇか」
「いいえっ」
「また自殺未遂をやらかしたと修斗から報告を受けてなぁ。
妙な気を起こさんように、とりあえず若いもんに見張らせとけと言ったのは、わしだ」
「ごめんなさい‥‥もう絶対にしません」
「顔あげろ、由奈」
顔をあげると
おじいちゃんは私のすぐ正面に立っていた。
「心から反省してる、と言ったな。
嘘じゃねぇな?
その場しのぎのことを言って、俺の顔に泥を塗るようなことは、もうねぇな?」
今にも足が飛んできそうな距離
真顔で見下ろされて
心臓が
ぎゅっと縮みあがる。
「はいっ」
「よし、いいだろう。
ツトム、部屋に若いもんを置くのはもういい。人手も惜しいしな」
「かしこまりました」