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禁断兄妹

第67章 罪と罰②



「しかし由奈、お前また顔が削げちまったなあ。ちゃんと食ってんのか?
 おいツトム、何か食うもん持って来い」


「はい」


ツトムさんは
すぐに部屋を出て行った。


「こんなとこにいるのはつまらんだろうが、うるさい外野の声も聞こえんし、静かでいいだろうよ。ほとぼりが冷めるまでゆっくりしてるといい」


「はい。お世話になります」


おじいちゃんは部屋の中を歩き
棚に置いてある本を手に取って
パラパラとめくり始めた。


「あ、ばあちゃんは旅行でいないから。お前によろしくと言っとった」


「‥‥はい」


おばあちゃんは昔から私のことを快く思っていないから
家にいたとしても
私の顔を見に来るはずもない

旅行のことも
よろしくということも
きっとおじいちゃんなりの
優しい嘘


「‥‥どれもこれもナントカ殺人事件ばかりじゃねえか‥‥ったく」


しわが深く刻まれている
彫りの深い横顔

非情さと
暖かさを併せ持つ
不思議な人


お父さん


口にすることは
今までもこれからもないけれど

この人が
私の父

私の運命を
握り続けている



「おじいちゃん」


「んー?」


「いつまでも甘えてごめんなさい。
 でもこれで最後にするから、最後の一生のお願いを、聞いてくれませんか」


意を決して
口にしたら

おじいちゃんは
吹き出して

高らかに笑いながら
私を見た。


「由奈!まったく、笑わせてくれるなぁお前は。本当に反省してるのか?ええ?」


笑う目の奥に
声の芯に

鋭利なものが感じられて

また心臓が
ぎゅっとなる。


「お前の一生のお願いは、東京に出て一人暮らしをすることだったはずだ。違うか?
 もう叶えてやったし、それを棒に振ったのはお前だよ?」

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