
禁断兄妹
第67章 罪と罰②
「‥‥なるほどな。
お願いと引き換えに、あんなに嫌っていた組の為に生きるって訳か」
おじいちゃんは顎を撫でながら
本気か?と
目を細める。
「本気です」
「しかしなぁ、若造の身の安全も修斗の指も、わしが今更指示を出しても、もう手遅れかもわからんぞ。
わしにまだ報告が届いてないだけで、若造はもう五体満足じゃねぇかも知れんし、修斗だってそうだ」
「たとえ手遅れだったとしても、文句は言いません」
おじいちゃんに報告がないなら
修斗の復讐は
まだ果たされていない可能性がある。
間に合うかも知れない
希望の光を感じて
胸が震えた。
「わしを安心させる、と言ったな。
家や組の仕事をしてくれるのも悪くないが‥‥どうだ、わしが嫁げと言ったら、嫁ぐか?」
「嫁ぎます」
「ふうん」
おじいちゃんは
愉快そうに口の端を上げた。
一瞬目が合ったツトムさんは
険しい表情で私を見ている。
「まあ今回の件で愛想をつかされたとしてもおかしくはないが、神楽のせがれは構わないと言うかもな。お前を随分と気に入ってるようだから」
以前からおじいちゃんに勧められていた
神楽組の長男との結婚
極道の娘は極道の家に嫁ぐのが一番なんだと言い聞かされてきたけど
私は今まで
嫌だと言い続けてきた。
「もしお前を貰ってくれると言うなら、ありがたい話だから受けなさい。
あそこは金があるからお前は一生楽できるし、組も安泰だ」
「はい」
お金と勢力拡大の為の
政略結婚
だとしても
この身を捧げると
決めた今
もう心は
暴れも痛みも
しなかった。
「おい由奈。今はしおらしくハイハイ言っとるが、もしわしを裏切るようなことがあれば、若造はお前の目の前で半殺しにするからな。修斗もきっちり詰めさせる。
どうだ、本当にわしを裏切らない覚悟はあるのか?」
笑みを湛えた細い目が
刃物のように
ぎらりと光った。
脅しじゃない
この人は
きっとそうする
「覚悟はできています。私を、信じてください」
沈黙の中
審判を
待つ。
「よし、いいだろう」
おじいちゃんは
パン、と両手を叩くと
「ツトム、修斗に繋げ」
「はい」
