テキストサイズ

禁断兄妹

第67章 罪と罰②



ツトムさんが素早い動きで携帯を操作し
捧げるようにおじいちゃんへと差し出した。

耳に当てられたその携帯から
繰り返される呼び出し音が
微かに漏れ聞こえる。


修斗

早く出て


「出ねぇな。こんな朝っぱらからツトムごときの電話には出んか」


リビングに置いてあるという自分の携帯を持ってくるよう
おじいちゃんはツトムさんに言いつけた。


「一刻を争うかも知れないの、その携帯を貸してくださいっ」


ツトムさんは風のように出て行ったけど
今は数秒でも惜しい


「しょうがねぇな」


おじいちゃんは呆れ顔で
私にツトムさんの携帯を放り投げた。


柊君の番号は
暗記してる

知らない人の番号には出そうにもないけど
やらないよりはまし


祈るような気持ちで
電話をしたけれど

柊君は
出なかった。


「ごめんなさい、もう一人だけ」


返事を待たず
急いで手帳をめくり
和虎君に電話した。


和虎君なら
出てくれるかも

柊君の身に何か起きていたら
知っているかも知れないし


「‥‥はい」


繋がった‥‥!


「和虎君!!私よ、由奈!!」


「由奈?!」


不審そうだった低い声が
裏返る。


「由奈あんた、あんた大丈夫なの?!今どこにいるの?!」


「私は大丈夫。時間がないから要点だけ言うわ。
 あのね、柊君が今どうしてるか知ってる?誰かに脅されたり、怪我させられたりとかしてない?」


「えっ‥‥?」


「うちの組員が柊君への復讐を仄めかせて出ていったの。昨日の深夜‥‥24時間以上も前のことなの。

 今から会長が柊君には手出ししないように指示を出すけど、もう何かしてしまったかも知れなくて心配で───」


「ちょ、ちょっと待って由奈、今、柊兄に復讐って言った?!」


「う、うん」


「どんな奴?もしかして俺とか柊兄くらい背の高い男?そうだ、黒のロングコート着てる?!」


矢継ぎ早の
鋭い問い掛けに

最後に見た修斗の後ろ姿が
脳裏に浮かんだ。


翻る
黒い翼


まさか


ストーリーメニュー

TOPTOPへ