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禁断兄妹

第68章 罪と罰③~灰谷の告白~

 

「私はとりあえず一緒の電車に乗りこみました。萌さんは泣いているせいか俯き加減で、近くにいる私に全く気づく様子がありません。
 断られたのに長時間待っていたことの後ろめたさもあり、ためらっているうちに声をかけるには不自然なほど時間が経ち、病院からも遠く離れ、図らずもストーカーの様相を呈してきました。

 今更声をかければ不審がられそうで、かといって萌さんを一人にして帰ることなど絶対にできない‥‥私は苦肉の策として、萌さんがマンションに無事帰りつくまであとをついていくことにしたんです。

 倫理的に問題があるとは思いましたが、もう後に引けなかった。
 もし気づかれたならその時は正直に理由を話そうと決めていました‥‥しかし結果的に、最後に私が姿を現すまで、萌さんに気づかれることはありませんでした‥‥

 これが萌さんのあとをついていくことになった経緯です。

 はい‥‥弁解の余地はありません。
 その時の私にとっては苦肉の策でしたが、黙ってついていくなんて、明らかに間違っていました。

 萌さんにも、あなたにも、謝ります。謝って済むことではないけれど、本当に、申し訳ありませんでした。
 
 どのタイミングでもいいから姿を現し声をかけるべきだった‥‥
 
 どれほど後悔しても、遅いのですが」

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