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禁断兄妹

第68章 罪と罰③~灰谷の告白~



「萌さんはチラシのような紙を手に、マンションとは別の場所を目指していました。
 帰りに寄りたいところがあると言っていたので、きっとそこへ行くのだろうと私は考えていました。
 そして電車を降りた萌さんが、紙を見ながら辺りを見回し、早足になっては立ち止まり、ようやくたどり着いた先は、驚いたことにクラブでした。

 その時はわかりませんでしたが、あなたに巽さんの危篤を知らせる為に、萌さんは急遽あのクラブへ行ったんですよね。
 帰りに寄るところがあると私に言っていたのは、どこか別の場所だったのでしょう。

 中学生が入れるような場所ではないのに、萌さんはためらわず中へと入っていきます。唖然としながら私も入口に近づくと、一ノ瀬さんが写っているファッションショーのイベントのポスターが貼られていて‥‥それで萌さんは関係者として特別に入れるのだろうと、その時の私はそう理解しました。
 
 私も中へ入ろうか、ここで待っていようかと思案していると、萌さんが飛び出してきたので、私は慌てて隠れました。続いてあなたも出てきましたよね。

 萌さんを追いかけようとしてスタッフに止められたあなたは、取り乱した様子で『戻れ、タクシーを使え』と叫びましたが、萌さんは振り返りもせず駆けていった。

 私は再び萌さんのあとを追いましたが、あなたに気づかれていたとは、思いませんでした。
 ストーカーと誤解されても文句は言えませんが、今お話ししてきたような流れがあって、私はあの場にいたんです。

 それは信じてもらえていますか‥‥?

 ありがとう。
 この先を伝える勇気が出ます。

 ‥‥続けます」
 

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