禁断兄妹
第68章 罪と罰③~灰谷の告白~
「話がついたのか、男は歩き始め、萌さんもその後ろをついていきます。
クラブに戻るのではなく駅へ向かうようだな、と思って見ていると、男は突然走って道を折れ、萌さんもそれに続き、二人の姿は私の視界から消えてしまいました。
急いで二人が消えた曲がり角へ行ってみると、もう姿は見えない。また曲がったということになります。遠ざかる足音を頼りに私は二人の後を追いました。
訳がわかりませんでしたが、大声をあげようという気にはならなかった。萌さんは男に無理矢理手を引かれてた訳ではなく、自主的にあの男についていってる様子だったからです。
急いで帰ることになり、男が知っている近道を行くことになったのか‥‥そうだとしても、ここであの男にバトンを渡すつもりなど私には毛頭なく、自分もマンションまでは必ず見届けるのだと、執念にも似た気持ちで耳を澄まし、足を動かしました。
しかし二人の姿がやっと見えたと思ったらまた道を曲がられてしまい、見失う。
小道を複雑に折れながら進む二人を必死に追いながら、おかしい、と私は思い始めました。
先を走る男はどう考えても、おかしな道を選んでいる‥‥これは近道ではない‥‥
気づいた時には、完全にまかれていました‥‥」