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禁断兄妹

第68章 罪と罰③~灰谷の告白~



 「急いで首と手を縛りつけていたネクタイを外し、汚れを拭いて衣服を整えていると、萌さんは目を覚ましました。
 私は、男は失神しているのでもう大丈夫だと伝え、そして自分がここにいる経緯を説明し、助けられなかったことを謝りました。

 しかし萌さんはぼんやりとした様子で返事がなく、私が自分のコートを着せてあげた時も、人形のように無反応でした。

 強いショックを受けたせいで、茫然自失となっていたのでしょう。そんな様子も本当に痛々しくて、何故萌さんがこんな目に遭わなければならないのか‥‥あの男達の悪行にも自分のふがいなさにも、怒りが込み上げるばかりでした。

 私は萌さんに、とにかく警察を呼ぶと、倒した男達が目を覚まさないうちに縛りあげてくると、伝えました。
 その言葉で萌さんは我に返ったんでしょう。悲鳴をあげ、目を見開いたまま硬直してしまったんです。
 思わず手を伸ばした私に、萌さんは、やだ、と悲鳴をあげて後ずさりしました。
 全てを思い出したんだと思います。可哀想に、恐怖に満ちた真っ青な顔で、呼吸も荒くガタガタと震えていました。

 あんな目にあったんです。男に近寄られたり触られたりするのが嫌で、当然です。
 それでも萌さんは、ごめんなさい、と私に言いました。
 喉元をきつく縛られていたせいでしょうか、ひどく掠れた声でした。
 
 私は苦しいほど胸が痛み、早く警察を呼んで男達を連行し、萌さんは病院で診てもらわなければと思いました。

 しかし、通報しようと携帯を操作する手を、萌さんに止められました。
 私の腕を掴んで、必死に首を横に振るんです。

 萌さんの気持ちは、わかります。あんな目にあったことを、誰にも知られたくはないでしょう。
 でも、萌さんがそう言うならそうしましょう、なんて思えるような状況じゃないですよ、あの男達を無罪放免にすることなんてできませんよ、絶対に‥‥っ」

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